ラフロイグ蒸溜所はスコットランド北西部にあるアイラ島の南部に位置する。「ラフロイグ」とは“広い入り江の美しい窪地”を言うゲール語(古いスコットランド語)その風光明媚さはスコットランドの蒸溜所の中でも1、2を争う。
スコッチウイスキー好きな人達の中でも、人気は1、2を争う銘柄だ。一方で好きと嫌いの2種類に分けられるほど個性的なウイスキーでもある。ラフロイグは創業1815年。その後アメリカの禁酒時代に薬用酒として認められた事がある。なぜか?それはピーティーと表現される香りが医療のヨード香に近いからだ。その香りは泥炭(ピート)に由来する。
写真の黒い塊が泥炭。元々は貧しい土地のスコットランドで家庭用燃料として長く使われていた。ヘザー等の植物が年数を経て泥炭化したもの。現在、家庭で使われる事はほぼないが、ウイスキー作りにおいては非常に重要な役割を果たす。と言うより泥炭無しにラフロイグは存在し得ないだろう。
ラフロイグにおいては伝統的なフロアモルティングを貫いている。85%はアイラ島にある外部の麦芽を使い、残り15%を自前の麦芽を使用する。その際に使うのが島内のピート層を濾過されたピート香のする水を仕込みに使う。
フロアモルティングした麦芽の発酵を止める為に乾燥させる時にもピートを使用する。これにより更なるピート香がウイスキーの原料に付着する。
このラフロイグの愛飲者と言えば、英国チャールズ王だ。彼は一時期年間1,000本ものボトルをオーダーしたほどファンであり、ラフロイグ蒸溜所内には彼が味を認めたマーク(英国御用達マーク)が掲げられている。
ラフロイグはアイラの王と表現される事がある。それはピート香に由来する個性の強さからでもあり、一方であのチャールズ王ご愛飲の一本も関係あるだろう。因みにアイラの女王と表現されるのが、同じアイラ島のボウモア。どちらもピーティーなウイスキーだがその強さ、香りにそれぞれ個性があり、趣向が別れる。
アイラの王様とも言われるラフロイグ、実はベッシーウィリアムソンという女性が作っていた時代がある。元々は前オーナーの真面目な秘書として長く勤務していたのだが、その類稀な才能に気付いたオーナーが、彼女に蒸溜所マネージャーとオーナーのオファーをしたのだ。オファーを受け入れたベッシーは蒸溜所初の女性マネージャーとなり、ラフロイグにとり重要な時代を作り上げる。
ラフロイグは今、日本のサントリー傘下にある。伝統の産業も世界の荒波に揉まれることを拒否できない。しかしベッシーが守り抜いた2つの鉄則①フロアモルティングを続ける事 ②アメリカンバーボン樽を使い続ける事 を貫く事で、個性あるウイスキーを作り続け、世界の人々に愛される銘柄になる事を想像する。
【ラフロイグ蒸溜所 Laphroaig distillery】
住所 Laphroaig, Isle of Islay PA42 7DU, United Kingdom
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